アメリカ政治とアイドルの分析してみた。
前回の哲学で語り切れなかったことがあったので、前回の続編になります。
前回は、二項対立の問題点についてがメインの話題でした。
二項対立というのは、生と死(生⇔死)、男と女(男⇔女)みたいに対義語となるような正反対の2つの概念・言葉の関係性のことです。
現代人はこの二項対立の考えが無意識の中でベースになっていて、その二項対立の始まりと問題点が前回の話でした。
今回は、問題点あるけど二項対立は使えるところもあって、政治や文化の分析にも使えるという話です。
その人は、ニューアカデミズム(ニューアカ)という社会の動きにも影響を与えました。
ニューアカは、構造主義やポスト構造主義といった哲学の考えがそれまでアカデミズムの場でしか話題になっていなかったのが、一般大衆にも広がり、哲学が一般大衆にも消費されるようになった80年代に最も盛り上がった動きのことです。
その方は、西洋の哲学を日本に輸入しつつ、フィールドワークを基に「中心と周縁」の理論というのを打ち立てました。
これは、文化や政治といった空間、場といった文脈の中でみられる考えです。
「中心」というのは、文化や政治の中心のことで秩序がしっかりしていて、「周縁」に比べ動的というより静的な状況になっています。
逆に、「周縁」は無秩序で、「中心」より動的で活発な状況になっています。
例えば、ドーナツ化現象というのがあります。
ドーナツ化現象は、都心の居住人口が減少し、郊外の居住人口が増加する現象のことです。
都市の「中心」は、都市化が進むにつれ、土地の値段が上がったり、排気ガス・騒音などの環境の悪化で住みづらくなることで、都心に住む需要が小さくなり、居住用のマンションや戸建ての建築が減ったり、都心にあった商店街などの商業施設が廃れていったりします。
逆に、都市の「周縁」である郊外は、地価が安かったり、住環境が良いこともあり、新しいニュータウンが作られたり、人が増えることで大型ショッピングモールなど新しい商業施設がつくられたり、経済も活発になります。
このように文化や政治の中心地は、段々と廃れたり、問題が起こったりします。
この「中心と周縁」の理論は、アメリカ政治でも起こっていました。
画像は「 photoAC」 より引用
これまで、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマといったエスタブリッシュメント(既存の支配層)と呼ばれる政治家たちが大統領となり、アメリカ政治の「中心」を担っていました。
権力が固定化し、有権者の中ではエスタブリッシュメントへの不信感が大きくなりました。
そんな中、アメリカ政治の「周縁」から来たのが、トランプ前大統領でした。
これまでビジネスの分野では活躍しつつも、政治の実務経験もなく、スキャンダルも問題発言もありつつも、選挙ではエスタブリッシュメントであったヒラリー・クリントン候補を破りました。
その後、トランプ前大統領の政治が良いか悪いかは置いといて、よそ者として「周縁」から「中心」にきたことで、一気にアメリカ政治は盛り上がりました。
今までの政治家の常識から考えると行動も発言も無秩序です。
そんな彼に、メディアもその一挙手一投足に注目し、報道しました。
選挙に負けたという報道になっていますが、有権者の半分近くの得票を得ました。
先日も次回の大統領選に出馬を示唆する発言が報道されたり、彼の動きに対する注目度は、歴代の元大統領より高いです。
このように「中心と周縁」の理論は、周縁に着目した理論で、文化や政治というのは、段々と「中心」が固定化し、動きが鈍くなっていくものですが、「周縁」の要素を「中心」に持ってくことで、「中心」も全体も再び活発化するという考えです。
ここまでは、「中心と周縁」の理論を学んだ僕が、具体例に落とし込んだ例ですが、塾の先生は、当時全盛期だったAKB48や地方ブームを具体例に上げていました。
AKBのプロデューサーの秋元康さんが、この「中心と周縁」の理論を知っていたんじゃないかと推測していました。
当時、地方のいろんな県をテーマにしたテレビ番組ができたり、地方創生が言われ始めたり、地方が盛り上がってきていました。
そして、そのころAKBがアイドル文化の「中心」でした。
かつて「中心」にいたモーニング娘。のようにこのままだと停滞し、自分のプロデュースしたグループが終わってしまうことを避けるために、アイドル文化の「周縁」をたくさん作ったのではないかと先生は推測しました。
AKBは秋葉原を拠点としていますが、秋葉原は東京という日本の「中心」にあり、その「周縁」にグループを作るために、大阪・難波だとNMB48、博多だとHKT48みたいに地方を拠点とするグループを作りました。
さらには、「周縁」を海外に広げ、ジャカルタやバンコクにもグループを作ります。
そして、AKBの公式ライバルという位置づけで乃木坂46を作り、48系とは別の46系列(坂道系)といったライバル系列という「周縁」を作りました。
そのおかげもあってか、AKBの人気が以前ほどではなくなっても、今でもアイドル文化自体は盛り上がり続けています。
日本のグループの中では乃木坂46は「周縁」からアイドル文化の「中心」になり、それに続く、櫻坂46(欅坂)や日向坂46も活躍しています。
秋元さんの「周縁」作りはここに挙げなかったものもあり、すべて成功しているわけではありませんが、大筋上手くいっています。
こんな感じで、エンターテインメントやビジネスでも二項対立が活用されています。
政治の場でも、アイドル文化のようなサブカルチャーの場でも、ルールからある程度自由で活発な「周縁」の要素を「中心」に持ってくることで、その政治や文化を再活性化させることができるということでした。
今回は、二項対立には問題がありつつ、けっこう使えるよという話でした。
そして、政治や文化、ビジネスの場での分析にも二項対立は使えるということでした。
ここまで複数の記事で、アカデミックな話題が続きましたが、次回で終わりになります。
では、また (^^)/